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思えば、彼と付き合って5年、2人とも忙しくて旅行に行ったり、ホテルに泊まったりなんてした事なかったな・・・・。
バスルームの照明を消してキャンドルに火を灯すと、ビルの夜景とマッチして幻想的な空間に自分がいる感覚になる。
「もっと、我が儘言ったりすれば良かったなぁ・・・こんな終わり方するなら」
マリはピンクのペディキュアを塗った爪先を右左にユラユラと揺らす。
白い泡の中から自分の2本の脚を出しては沈める。
次に付き合う人とは・・・・。
そう思ってはみるが、今のマリの頭の中には何も浮かばない。
「次、なんて考えらんないよ・・・・」
マリの頭の中を占めていたのは、自分の30歳の誕生日を彼と一緒にお祝いする事だった。
そして、何となく思っていた。
30歳になった瞬間、彼からプロポーズされるんじゃないかって。
そんな泡みたいな期待をずっと持ち続けていた自分を呪いたかった。
ブクブクブク・・・・。
マリはバスタブから脚だけを出して、頭を泡の中に沈ませた。
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