1章

7/33
前へ
/242ページ
次へ
 ――俺、やましいことしてないんです。  ――浮気したから慰謝料要求って、俺、浮気してませんよ!  瀬川は半年前から女性と付き合っていた。  マッチングアプリでコツコツとやりとりをし、ちょくちょくデートというか食事をするようになった。ホテルにも行くようになった。一ヶ月前には両親に紹介をかねて挨拶をしていた。  しかし、三日前、女性の夫と名乗る男性から「俺の妻と浮気した」ということで慰謝料請求をされた。  支払いの締め切りは今週までと言われ、急いで払ってしまった。  デート中の写真や、女性とのやりとりの文面、通話記録など証拠も一緒に送られてきたから、八方塞がりである。  ここで初めて、女性が既婚者であることを知ったのである。  当然、瀬川はそんなこと知らなかった。  メッセージのやりとりは普通だったし、休日の夜にデートすることもあった。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加