1章

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「これを読んでみて」と茶封筒を渡される。  封筒を開けると「慰謝料請求します」というような内容。しかも三百万だ。こんなのドラマの話だと思ってた。  きちんと弁護士の名前書いてあるから、ガチっぽい。  でも請求されるようなことをした覚えはない。  カードや家賃の支払いはきちんと給料が振り込まれたらすぐにやってるし、滞ったことがない。  三百万なんて、社会人歴一桁の自分にはめっちゃデカい金額。 「どういうことですか?」 「君はこちらの女性と半年前から関係を持っているね?」 「はい」 「――僕のなんだ」 「はあーっ?! つ、妻?!」  調子はずれの声を出すの二回目。 「どういうことだ? お前既婚者だったのか?!」 「はい……頼むから、払ってくれないと……夫に殴られるから……それにあなたの家に乗り込むって……」  懇願するようなすすり泣くような声。
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