797人が本棚に入れています
本棚に追加
「かなり前から電車の中で僕のことを見ていたんですよね。この店で見かけてすぐにわかるほど覚えていたようですから」
「まぁ……そう……なんですけど……」
「今だってこうして追いかけてきてるし」
そうなんだけど……。
返す言葉が見つからない。
「と、とにかく、あなたに付き纏っていませんので誤解を——」
「だから、その言葉をどう信じろと?」
尚も強い言葉で明らかに不愉快そうに視線を投げられている。だんだんこの状況に苛立ちを感じてきた。何でここまで私が責められないとならないのだろうか。少なくともこの喫茶店で会ったことは偶然なのに。
「じゃー、どうしたらいいんですか? どうしたら信じられます?」
思わず喧嘩腰に言い返してしまった。
「そうだな……これから1週間、僕と一切会わなければ偶然だと信じてあげますよ。付き纏ってないなら簡単ですよね。見ず知らずの人と何度も会うことが、そもそもおかしいんですから」
なんか、すごい上から目線。まぁ仕方ないんだけど。
「わかりました」
「では、失礼」
冷たく言い放ち振り返ってその場を去っていく王子様。……いや、もう王子様と呼ぶのもやめよう。王子様なんかじゃない。
はぁ……運命だと思ったのに。
最初のコメントを投稿しよう!