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真野さんが何度も念押ししたくなる気持ちもわかる。『藤城エージェント』といえば知らない人はいないほど大手の広告代理店だ。
「ある程度収入があって、初婚で、年齢が近い、考え方の合う人」という地に足のついた理想の結婚相手像を持っている玲にはうってつけの相手だろう。
「行く気になったら声かけてね。明日の19時だから」
食事を終え、トレーを手に席を立った真野さん。
「……相変わらず『お食事会』に行ってるんだね」
「まあねー。そのくらいしか出会いもないし。この前、真野さんが広報部の人から誘われたみたいで、私も『藤城エージェント』の人たちとの食事会に行ったんだよ。今回で2回目なんだけど」
「へぇー、さすが真野さん。顔が広いね。……いい人いたんだ」
ニヤッと笑って玲を見ると「うーん、微妙」と煮え切らない答えが返ってきた。
「でもご指名を受けてるんでしょ?」
先程の話の内容からして『玲に来てもらいたい』ということなのだろう。
「らしいけどねー」
ため息混じりにトレーを手に立ち上がる玲。そこで興味が湧いてきてしまった。玲に好意を抱いているという人を見てみたい。
「私も行こうかなぁ、明日」
「え? あー、冷やかしか。どうせ『その人見てみたい』とか思ったんでしょ」
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