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「そ、そうなんですけど……相手が、相手で……」  不思議そうに私の表情を窺っている。  言いづらい……。非常に言いづらいけど……。   「あの……葉山さんなんです。葉山さんと結婚することにしました。ずっと黙っていてすみません! 平瀬さんの気持ちを考えると——」 「嘘でしょ! 葉山さんなの? え、じゃ、じゃあ、葉山さんの『思い人』って月宮ちゃんなの? 元カノも?」  ものすごい驚き方で身振り手振りの大騒ぎをしている平瀬さんに、周りからも一気に注目が集まる。 「ちょ、ちょっと、しーっ! 平瀬さん、廊下に出ましょう」 「あ、す、すみません」と周りに会釈をしながら2人で廊下に出た。 「葉山さんの相手って、ずっと月宮ちゃんだったの?」 「まぁ、はい、たぶん。すみません、ずっと黙っていて。彼からも頼まれていたので……」 「そうだったんだ。良かった……。葉山さんが好きな人と結ばれて」  穏やかに笑顔を浮かべている平瀬さんに胸がぎゅっとなる。  本当に好きだったんだなぁ、きっと。好きな人の幸せを自分のことのように喜べるのはそれほど好きだってことだと思う。
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