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 朝から莫大なデータの取りまとめを頼まれたり、ついこの間仕上げたばかりの資料にミスを見つけたり……。端的にいうと落ちている。先輩方や同僚とのランチも楽しいけど、こういう日は1人になりたい。  ここはいつも静かで落ち着く。  ジャズやクラシック音楽が控えめに流れている店内。路地を入った立地のせいか、日当たりが少し悪い。でもその陰鬱とした感じも店内の雰囲気と相まって丁度いいとさえ感じる。  う〜ん! やっぱりここのオムライスは美味しい。社食のとは大違い。  窓際のテーブル席に座り、人通りも少なめの外を眺めたりしながらオムライスとミニサラダを食べ終えた。  セットのアイスコーヒーを飲んでいると、隣のテーブル席に座っていた若い男性が席を立つ。……確か、私が注文をしている時に来た気がする。それからずっとお店の入り口を向いて横並びに座っていたから顔は見ていないけど、伝票を持ってレジに向かったようだ。  ふとそのテーブルに視線が流れるとダークブラウンの革張りの手帳のようなものが左端に置いてあるのが目に入る。  え? 忘れ物……だよね?  あのピシッとしたスーツ姿からして、この手帳のような物は大切な仕事道具のような気がした。 「あ、あの!」
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