01

7/44
前へ
/399ページ
次へ
 会計を済ませて会社に戻る途中、ずっとニヤニヤと顔が緩みっぱなしだ。午前中の嫌なこともすっかり吹っ飛んでいる。  運命だ。きっと。ここから恋が始まる!  残業にはなってしまったけど、気分は明るい。大学の頃から一人暮らしをしている単身向けの賃貸マンションに帰り、大好きな低アルコールの甘い缶チューハイで祝杯をあげた。  週明けの月曜日。  今朝は念入りに身支度を整える。だってきっと今日電車で王子様に会ったら「あ、あの時の! ありがとう、助かったよ」とか何とか言われて恋に発展するのだから。  私がずっと憧れている少女マンガにありがちな展開。玲や他の人たちにも散々「そんな事は起きないって! 現実を見なよ」と呆れられていたけど、諦めなくてよかった。  やっぱりあるんだよ。世の中にはこういう運命的な恋愛も。  いつも通りの時間に家を出て、いつもの場所で電車を待つ。5分ほどで京浜シーラインがホームに入ってきた。電車に乗り込み、車内を見渡す。  ——あ、いた。  いつもの長イスに座っている王子様はラッシュ時の混み合う車内でもすぐに発見できる。日によって本を読んでいたり、ノートパソコンを開いていたり、寝ていたり。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

784人が本棚に入れています
本棚に追加