異常者の日常

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 放課後。  いつもはサボっている部活に、今日は参加する。弓道部。ほとんど公式試合にしか顔を出していない。試合に出ているのだって、そうしないとこっぴどく怒られて面倒だから。  部員に珍しがられながらも、無感情に、無感動に矢を放っては的に当てる。  今日部活に参加したのは、ただの暇つぶしだ。東条がどうしても一緒に帰りたいと言うので、時間を合わせる必要があった。  部活動が終わり、西日を受けながら校門で待っていると、彼が来た。  並び歩いて恋人らしいやり取りを演じながら、適当なタイミングで手を握る。  別れの(きわ)、交差点が見えてくると、東条は頬を染めてもじもじとしだす。 「あ……あのさ」  彼が急に立ち止まる。私はその数歩先を歩いたところで立ち止まって彼を振り向く。 「うん? どうしたの」 「きょ、今日、家来ない?」  ちなみに、これを言われるのは三回目だ。前の二回とも理由をつけて断っていたが、さすがに怪しまれそうなので、今回は仕方なく了承する。  彼の嬉しそうな顔を暗然と見つめながら、家へ向かった。  着くと東堂が鍵を開け、はにかみながら「今親いないから」なんて言って見せる。  ——(たま)に思う。  私は、何をやっているのだろうと。  急に自分が馬鹿らしく感じて、仕方無くなる。  好きでもない東条に寄り添って、惚れているフリをして、誰の為にもならない我慢を続けて。  でも、これが私の生き方だから。  これが私にとって必要な事だから。  ……それを疑ったら、虚しくなるだけ。  特に欲してもいない愛情で、今日も心が摩耗していく。  ……彼が、口から口へと愛を注ごうとする。私はそれを受け入れる。  でも、私の心は空の器のままで、愛なんてものでは微塵も満たされはしなかった。
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