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憎しみと邂逅
あいつらを、殺してやりたいと思った。
それか、僕が死ぬか。その二択しかないように思えた。
——でも、そんなことはなかった。
『殺したい人はいませんか。殺されて欲しい人はいませんか』
どこか遠くから、そんな声が聞こえた。
その声は、あいつらを憎いと思えば思うほど大きくなっていく。
『お金は要りません。あなたの憎しみを使って、あなたの憎む人を殺させてください』
優しくてきれいな、女の人の声。
なのに、どこか底冷えするような、冷たい、声。
『ご依頼の際は、殺し屋キライの名をお叫びください。……きっとすぐ、あなたの目の前まで駆けつけましょう』
あいつらを殺すことは、きっと僕にはできない。
けど、殺し屋とやらに頼めば……。
——でも。
もし仮に、上手いこと『殺し屋』とやらを呼び出せたとして、その人は本当に、信頼できるのだろうか。
そんな考えから、僕はずっと、この現状をどうにもできずに持て余していた。
『この現状』というのは、小学六年生の僕がいじめを受けているという……この現状のこと。
もし、もっと自分が、顔が良かったり、威圧感があったり、頭が良かったりしたなら起こらなかったかもしれない、この現状のこと。
もっと幼い頃、母親から虐待を受けていた僕は、警察に引き取られ、児童養護施設に引き取られ、小学校に通うことになった。
みんなのように笑えない。
みんなのように泣けない。
みんなのように喋れない。
ちょっとしたことから、母につけられた腕の大きな火傷痕が見つかって、気持ち悪がられた。
僕は一体誰を憎めばいいのだろう。
刑務所にいる親だろうか。
クラスのいじめっ子たちだろうか。
……わからない。
わからないけど、これだけは確かだ。
——みんな、僕の人生に邪魔だから、消えてほしい。
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