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下校しながら、今日もそんなことばかり考える。
そろそろ、学校に行くのをやめたいところだけど、そうもいかない。
僕は、見返さなくちゃいけない。親も、クラスメイトも。……それが、僕にできる最大限の復讐だから。
だから、たくさん勉強して、いい成績をとって、それで頭が良くなって、お金持ちになる。
僕にはもうそれしかない。
——不意に、小さい頃親につけられた全身の傷痕が疼き出した。
そして、痛みで立ち止まった僕と同時に、目の前で誰かが立ち止まった。
身長は(平均身長より少し下の)僕と、頭一つ分くらいの差。見上げて顔を見てみると、肩ほどの白い髪がまず先に目を引いた。
次に、紫色の目。切り揃えられた前髪が少しだけかかっている。
怪しく光るその目に、僕を映している。
……怪しいと思った。
目だけが理由ではない。
僕の前で立ち止まったこと。どこか大人っぽい雰囲気をまとっているのに、近くの中学のセーラー服を着ていること。特徴的な白髪で、一度見たらそう忘れないはずなのに、この狭い町で見た覚えがないこと。
どれをとっても小さな違和感でしかないのかもしれない。
でも、その怪しさに恐怖を覚えるには、充分だった。
……まるで金縛りにあったかのように、動けなくなった。
僕は今、蛇に睨まれた蛙なんだと、はっきり解らせる何かが、その人にはあった。
その人が、何か言おうと口を開く。
威圧感がジリジリと、僕を蝕む。
「——人を、殺したいのでしょうか」
きれいで優しくて、どこか冷たい声がそう言った。
「!?」
その言葉にドキリとした。
第一に、僕の考えを当てたこと。
第二に、その人の声が、妙に聞き覚えのあるものだったことに。
もしかして、この人が……。
「申し遅れました。わたくし、殺し屋をやっておりますキライにございます」
ああ、やっぱり……。
この人が、殺し屋の人なんだ。
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