2人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
この呪われた館で、私は執事のセバスチャンとともに長い時を過ごしてきた。
そう。この館なかには時の流れが存在しない。
それはかつての愚かな私が望んでしまったもの。
美と若さを失いたくなかったあの頃の私が犯した、愚かな選択。
「本当にごめんなさいね、セバスチャン」
「もったいなきお言葉に御座います。お嬢様」
あの頃と全く変わらず、セバスチャンは私に尽くしてくれる。
今やただの執事ではない。この世に二人きりの盟友という感じさえある。
同時に彼に対する申し訳なさは止めどなく降る雪のように、私の心に積もっていく。
あの頃の自分を叱責できるものなら、すぐにでもしてやりたい。
「これは愚かな選択をした者か当然受けるべき報いね。けど、それももうおしまいにしましょう。彼は、ここへ来るのね?」
「使いのものを向かわせましたゆえ、まもなくかと……」
「ありがとうセバスチャン。私のこと、恨んでいるでしょう?」
「滅相もございません」
セバスチャンの顔にはほんのわずかな揺らぎも見えなかった。
それがかえって私の胸を締め付ける。
最初のコメントを投稿しよう!