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翌日以降、私は折り畳み傘を肌身離さず携帯するようにした。
これで、通り雨に悩まされず、夫の作業も中断させずに済む。
折り畳み傘が利点のみを生む便利な道具だと信じて疑わなかった。
けれども、日を追うごとに、夫婦の会話が段々減っていく。
夫が仕事部屋に籠っている時間はともかく、
リビングという同じ空間に身を置いているときでさえ、
やり取りする言葉は業務連絡に留まった。
しかも、私は原因を探ろうとも解決策を見出そうともせず、
多忙な時期が偶然重なった結果と簡単に理由づけてしまった。
いずれまた元に戻る。今はタイミングが合わないだけ。
そう思い込むことで状況が好転するのなら、どれだけよかったか。
半年後の私たちは遂に、挨拶もまともに交さない仮面夫婦に変わり果てていた。
異常な緊迫感を前にしては、ミルの与える癒しも無に等しい。
人知れず泣き腫らして歩く夜は退屈だった。
自宅前では、それまで高ぶっていた感情を抑えるために、
敢えて数分間立ち止まらなければならない。
暗雲の立ち込める未来に思いを馳せると、余計に涙が零れてきた。
なんて脆かったのだろう。関係の修復は当然の望み。
「あのね……」と前置きしてでも、沈黙を破ることができれば。
互いに傘を寄せて、他愛もない話に笑い合う一時に、
いかに掛け替えのない瞬間が集まっていたかを、この期に及んで痛感した。
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