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2018年
気がつくと、俺の目の前に見慣れたパソコンが置いてあった。雑然としたデスクの上には資料の山。どこかで鳴り響く電話の音に、紙の擦れる音に、話し声。
嘘だろ。今日は休日だったはず。それなのに、どうして俺は会社にいるんだ。
「どうしたんですか? 大宮さん。一瞬寝落ちしてた?」
隣のデスクで小金井さんが笑っている。彼女は確か、先月寿退社していたはずなのに。
「なんで小金井さんがここに?」
「なんでって、私は四月に配属されてからずっとこの席ですけど?」
彼女は猫のような丸い目で訝しそうに瞬きをする。
小金井さんが配属されてきたのはいつだっけ。
パソコンのカレンダーを開いて、また驚いた。今日の日付が、スマホのカレンダーで見た三年前の2018年になっている。
「今日、残業できないんじゃなかったでしたっけ? 同窓会があるって言ってましたよね。居眠りしてたらヤバいですよぅ」
小金井さんは若いのにしっかり者で、ちょっとひとこと多いところがある。結婚したら絶対に旦那を尻に敷くタイプだと思う。
それはともかく、今日は同窓会なのか。あの日の昼間に戻ってきた……?
肌に訴える感覚は、ここが夢の中ではなく現実だと教えている。
現実だったら、仕事をしなくてはならない。
三年前の記憶を呼び起こす。俺がこの時任されていたのは、新しい経理システムの構築だ。
あの時散々手こずったおかげで、ゴールへの道筋をはっきりと思い出せた。その後の三年間の経験も身についている俺にとっては、もうそれほど大変な作業じゃない。
定時で終わらせられる。そして、同窓会へ。
何故かは分からないけど、あの日をやり直せるんだ。
待っていてくれ、翼。
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