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同窓会
同窓会の会場は、洒落た居酒屋だった。
幹事が貸切で予約してくれたらしい。四十人いたクラスの仲間の八割くらいが集まっていた。こうしてみると、仲のいいクラスだったんだな。
思春期の塊で少し尖っていたはずの男子は、自然と女子のテーブルに入っていけるようになっているし、あんまり目立たないと思っていた女子は、メイクで大変身していて誰だか分からなくなっている。
たった数年で人って結構変わるものだ。
翼はどこにいるんだろう。
あの日の翼が何を着ていたのか思い出せない。パンツスタイルだったか、スカートだったか。
昔は「翼」なんていう男らしい名前に流されて、ショートカットにズボンばかり履いていた印象だったけど、この時はどうだっただろう。
少しは女らしくなっていたかな。
「……伯崇」
酒も飲まずにウロウロしていた俺の背中に、遠慮がちな声がかかった。
振り向くと、ショートカットで背の小さい──いい意味で昔のままの翼がいた。
ただ、言葉に詰まってしまうくらい綺麗になっていた。
艶のある前髪や細い体、白い肌。ああ、唇にはリップをつけるようになったんだ。目元にも少し色が乗っているのか。記憶の中と違う場所を見つけては、いちいち驚いてしまう。
「そんなにまじまじと見ないでよ。ボクが化粧してるのがそんなに変?」
「ボクって……まだその口調?」
「あっ、間違えちゃった。普段はちゃんとワタシって言ってるよ? 伯崇のせいでうっかり戻っちゃっただけ」
焦ってピンクになった頬が可愛い。
なんだよ。俺だけ特別みたいな言い方するなんて、ずるいな。
お前は三年後、俺の知らない男と結婚するんだぞ。
まだ間に合うんじゃないかって、期待してしまう。
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