同窓会

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 *  話すたびに昔に戻っていく。思い出が花開く。失われた景色が色づく。  そう思っていた。  過去に戻れさえすれば、欠けていた何かを見つけてやり直せるって。  でも、事はそう簡単じゃないと、カウンターで翼と二人きりになって話をしているうちに気づいた。  翼は終始うつむきがちで、言葉の端々にため息が混じっていた。  男と見間違うほど元気だった昔の面影はそこにない。 「何があった?」 「……なんでもない」 「元気ないじゃん。久しぶりに会ったのに」 「うーん」  翼は短い髪の毛を耳にかける。髪を触るのは困った時の翼の癖だ。   「元気だよ。仕事も順調だし、彼氏もできたし」 「彼氏?」  例の結婚相手だろうか。 「どんな人?」 「すごく優しいよ」 「どこで知り合った?」 「親同士の仲が良くて、ね」  翼はなんだか歯切れが悪い。普通、彼氏の話だったらもっと嬉しそうに話したがらないものだろうか。 「いつから付き合ってるんだ?」 「……最近だよ。でも知り合ったのは七年前」  七年前はいつだ。  指折り数えて、それが高校三年の時のことだと気がついた。    翼が急に「会えない?」と俺を呼び出そうとした、あの年だ。    
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