同窓会

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「そういえば、高三の時、俺を呼び出してなんか話そうとしてたよな? もしかして、そのことと関係ある?」 「……覚えてたの?」  翼の瞳が俺から逸れた。カウンターテーブルの仄かな照明に照らされた横顔が泣いているように見えてドキッとする。 「あの時はごめん。携帯のバッテリーが切れててさ。外にいたからすぐに充電できなくて」  あの日、外から帰ってきて充電したら、翼からメールが入っていた。 『やっぱりいい。忘れて』  何の用事だったのか気にはなったけど、あそこまでハッキリ言われたらな。了解のスタンプだけ押して、むしろあまり触れないようにした。  翼は忘れてほしいんだろうと思っていた。  話したくなったらまた連絡がくるだろうと思っていた。  でも、思えばあれがターニングポイントで、あれ以来翼とは疎遠になってしまったのだった。  いつでも話せると思ったのが、仇になった。 「なんだったの、あれ」 「もういいじゃん。昔の話だから」  翼はカクテルに手を伸ばす。俺は思わずそのグラスを取り上げた。驚いた視線がぶつかって強いインパクトになる。 「昔の話じゃねえよ。俺にとったら今でも大事な話。俺はお前に会うために、さっきまで必死で仕事してきたんだからな。本当は休みの日だったのに」 「そう……だったの?」  翼の目が泳ぐ。不安、悲しみ、ひょっとして怒り。そんなところをぐるぐる回って、着地点を探している。そんなふうに見えた。 「だったらなんであの時、了解だけだったの? 伯崇って、いつもそうだよね。肝心な時にいつもいないの──」 「お前こそ、肝心なことはいつもはっきりと言わねえじゃねえかよ。俺は鈍いんだから言ってくれなきゃ分かんねえんだって」  その時、翼の瞳は悲しみを着地に選んだ。 「ボクはただ、あの時伯崇にそばにいてほしかったんだ」  疑問が浮かぶ。  さっき、翼は彼氏ができたのは最近だと言っていた。  それなのに、こいつの瞳は何故こんなに暗いんだ。   「今でも……?」  今でもそばにいて欲しいのか。そう尋ねると、翼は我慢ができないというように席を立った。 「もう遅いの。さよなら」
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