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伸ばした手が空に浮かんだまま、何も掴めなかった。
結局俺は、翼を泣かせただけで、他には何もできなかった。
もう遅いって、なんだよ。
そんなに取り返しのつかないことになっていたのか?
すべての始まりと終わりはあの夏だ。
俺はすぐにスマホを取り出し、カレンダーの日付を遡った。
ただ、翼の涙の答えが知りたい。
それなりに忙しくなった大学を通り過ぎ、高校生の頃まで遡ると、一気に予定の空欄が目立ち始めた。受験勉強で遊ぶ暇もなかったから当然だ。
そんな高校時代の八月、たった一日だけ、光る文字が残っていた。
翼からの『着信あり』だ。
この頃に戻れたら、今度こそきっと──。
祈りを込めて文字に触れると、すぐに眩い光が俺の視界を遮った。
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