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すぐに帰ると母に告げて、家を飛び出した。
翼の家まで走って五分だ。
幼稚園、小学校もずっと駆け抜けてきたいつもの道は、暑さで遠くが歪んでいる。
誰よりも近くて、近すぎて、見えなくなっていたこの距離。
離れる時はあっという間だなんて、知らなかったこの時代。
全てを飛び越えるために、俺はここへやってきたんだ。
息を切らす間もなくたどり着いた翼の家は静まりかえっていた。
物音が一切聞こえない。留守かもしれないと一瞬思ったけど、それでも確かめたくて呼び鈴を鳴らした。
すると、しばらくしてドアが開いた。
開けたのは翼だった。
「……伯崇」
驚いたように丸くなった瞳には涙が浮いていた。
「翼、何があった?」
七年後には突き刺さらなかった言葉が、翼の胸を抉ったのが分かった。
サンダルを片方蹴飛ばしながら翼が飛び出してきて俺に抱きついた。
「お父さんの会社が……潰された……!」
それは思いもよらない一言だった。
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