4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
11 『恋人になろうよ♪』
私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。
そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。
そしてそれが当り前のことだと思っていた。
これから先もずっと変わらず続いていくものと、信じて疑わなかった。
告白はちょっとしたタイミング。
いつも同じ優しいあなたの笑顔。
私は意を決して、大きく深呼吸をし、俊の目を真っ直ぐに見つめる。
そしてとうとう、今まで言いたくても言えなかった、でもずっと想っていた言葉をぶつけた。
「恋人にして下さい」
「……」
無駄に長い沈黙が痛い。
心が張り裂けそうだ。
俊は少し照れくさそうに笑っている。
そしていつもの甘い声で答える。
「だめだよ」
なのに、どうして?
俊は私の方に近づいてくる。
もうやめて、これ以上私の心はもちそうにないから。
もうやめて、恋人になれないならそんな微笑みなど。
私はうつむいてあなたの言葉を噛み締めながら、哀しい気持ちを抑えてる。
やっぱり俊にとって私は、ただの幼馴染みでしかなかったんだ。
知ってた。知ってた。知ってたよ!
そんなこと解ってた。解ってたはず……なのに。
もう、いたたまれなくなった私。
もう、呼吸もできないくらいに。
俊は私の目の前まで歩み寄って、立ち止まった。
相変わらずの優しい微笑みが傷ついた心を抉る。
もうなにも言わないで。
これ以上傷つけないで。
「その言葉、俺に言わせて欲しかったな」
え?
今なんて?
あなたの言葉を聞き返す。
聞き間違いかと聞き返す。
「その言葉、俺に言わせて欲しかったな」
涙が、涙が零れてくる。あとから後から溢れてくる。
あなたが早く言ってくれないから、あなたが早く抱きしめてくれないから、
せっかちな私の心が言わせた言葉。
あなたはそっと抱きしめて、耳元で優しく囁いた。
「恋人になろうよ」
【完】
詩・『恋人になろうよ』
恋人にして下さい
私がそう言うと
少し照れくさそうに
笑うあなた
だめだ
あなたはそう言って
私の傍に近づいてくる
私はうつむいて
あなたの言葉を噛み締めながら
哀しい気持ちを抑えてる
その言葉
僕に言わせて欲しかったな
あなたの言葉を聞き返す
聞き間違いかと聞き返す
その言葉
僕に言わせて欲しかったな
涙が 涙が零れてくる
あとから後から溢れてくる
あなたが早く言ってくれないから
あなたが早く抱きしめてくれないから
せっかちな私の心が言わせた言葉
恋人になろうよ
最初のコメントを投稿しよう!