11 『恋人になろうよ♪』

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11 『恋人になろうよ♪』

 私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。  そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。  そしてそれが当り前のことだと思っていた。  これから先もずっと変わらず続いていくものと、信じて疑わなかった。  告白はちょっとしたタイミング。  いつも同じ優しいあなたの笑顔。  私は意を決して、大きく深呼吸をし、(しゅん)の目を真っ直ぐに見つめる。  そしてとうとう、今まで言いたくても言えなかった、でもずっと想っていた言葉をぶつけた。 「恋人にして下さい」 「……」  無駄に長い沈黙が痛い。  心が張り裂けそうだ。  俊は少し照れくさそうに笑っている。  そしていつもの甘い声で答える。  「だめだよ」  なのに、どうして?  俊は私の方に近づいてくる。  もうやめて、これ以上私の心はもちそうにないから。  もうやめて、恋人になれないならそんな微笑みなど。  私はうつむいてあなたの言葉を噛み締めながら、哀しい気持ちを抑えてる。  やっぱり俊にとって私は、ただの幼馴染みでしかなかったんだ。    知ってた。知ってた。知ってたよ!  そんなこと解ってた。解ってたはず……なのに。  もう、いたたまれなくなった私。  もう、呼吸もできないくらいに。  俊は私の目の前まで歩み寄って、立ち止まった。  相変わらずの優しい微笑みが傷ついた心を(えぐ)る。  もうなにも言わないで。  これ以上傷つけないで。   「その言葉、俺に言わせて欲しかったな」  え?  今なんて?  あなたの言葉を聞き返す。  聞き間違いかと聞き返す。 「その言葉、俺に言わせて欲しかったな」  涙が、涙が零れてくる。あとから後から溢れてくる。  あなたが早く言ってくれないから、あなたが早く抱きしめてくれないから、  せっかちな私の心が言わせた言葉。  あなたはそっと抱きしめて、耳元で優しく囁いた。 「恋人になろうよ」 【完】                          詩・『恋人になろうよ』 恋人にして下さい 私がそう言うと 少し照れくさそうに 笑うあなた だめだ あなたはそう言って 私の傍に近づいてくる 私はうつむいて あなたの言葉を噛み締めながら 哀しい気持ちを抑えてる その言葉 僕に言わせて欲しかったな あなたの言葉を聞き返す 聞き間違いかと聞き返す その言葉 僕に言わせて欲しかったな 涙が 涙が零れてくる あとから後から溢れてくる あなたが早く言ってくれないから あなたが早く抱きしめてくれないから せっかちな私の心が言わせた言葉 恋人になろうよ
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