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10 『恋人になりたい!』
私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。
そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。
そしてそれが当り前のことだと思っていた。
これから先もずっと変わらず続いていくものと、信じて疑わなかった。
昨日の電話で今日の放課後、屋上で待ち合わせることになった。
登校途中で俊は、なんの話だとしつこく聞いてくるが、軽々しく言えることではない。
「なぁ、もったいつけんなよ。話なら今すればいいじゃん」
「はあ? あんたはバカか? 今できる話ならわざわざ待ち合わせなんかしないでしょ!」
「そういうもんかなぁ。俺とお前の仲じゃん。遠慮しないでサクッと言っちゃえばいいのに」
「はん? ばーか」
そんなこと歩きながらついでに言うことじゃないじゃん。
もう、人の気持ちも知らないでのんきなもんよね。
子供の頃からずっと仲良し。友達以上恋人未満。でもずっと好き。
この関係を続けていきたい気もするが、このままでは寂しい気もする。
たとえ2人の関係に変化が生じてしまったとしても、それでも伝えたい私の本当の気持ち。
そしてどうしても知りたくなったあなたの本当の気持ち。
放課後、掃除当番を終えて待ち合わせより少し遅れて屋上に向かった。
走って階段を駆け上がったので、扉の前で呼吸を整える。
最後に大きくひと息ついて、恐る恐る扉を開けた。
「よっ!」
片手をあげていつもと変わらない笑顔で迎えてくれる俊。
「待たせてごめんね」
「ホントだよ! こんな真夏の屋上に1人佇んでたってなんにもなりゃしないよ。なるとしたら熱中症くらいなもんだよ」
「ホントごめん」
「おいおい、冗談だよ。いつもみたいにノってくれないとこっちが意地悪言ってるみたいじゃんか」
「ごめん」
こんなときに冗談なんて言えるほど、神経が図太くはない。
私のこころはさっきから大波小波に襲われて、今にも沈没してしまいそうなんだから。
「話ってなに?」
またいつもの優しい俊の声に、今なら言ってしまえそうな気がする。
「私達って子供の頃からの大の仲良しだよね」
「うん」
「いつもずっと一緒にいたよね」
「おう」
「雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。そしてそれが当り前のことだと思っていたし、これから先もずっと変わらず続いていくものと、信じて疑わなかった」
「なにが言いたいんだ?」
「でも、もうそんな関係はいやなの」
「どういうことだよ」
私は意を決して、大きく深呼吸をした。それから俊の目を真っ直ぐに見つめる。
そしてとうとう、今まで言いたくても言えなかった、でもずっと思っていた言葉をぶつけた。
「恋人にして下さい」
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