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2 意味不明~
私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。
そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。
教室でだっていつもそう。俊と仲良しの男子グループと、私の仲良しの女子グループ。私たちを通して当然一緒にいる機会が多くなる。
その上、何かにつけ私にちょっかいをかけてくる俊。子供の頃からの年中行事のようなもので、たまに鬱陶しく感じるときもあるが、なければそれはそれで少し寂しくもある。
今日だって……。
「お前さ、好きなヤツとかいる?」
人が一生懸命に次の授業の宿題やってるっていうのに、いきなり前の席に椅子をまたぐように後ろ向きにすわり聞いてくる。
「はあ? なによ、いきなり」
「だってさ、あんまそういう話聞かないからさ。どうなのかなと思って」
「花も恥じらう『お・と・め』だからね。まぁそれなりに好きな人の1人くらいは……」
って、見栄をはったけど、正直あまりピンとこない。こころときめく人なんていないな。
友達はみんな恋バナなんかして盛り上がってるけど。
今のところ間に合っているというか、別に興味ないというか。
でも、そういうのっていちいち人に言うことじゃないし、ましてや幼馴染みに言いたくもないし。
「で、告白とかしないの?」
「まさか! 私は自分からは言わないの。ってか、言えないよねそんなこと。まあ、パッチリお目々の愛らしい私だからね、そのうち誰かが告白してくるかもよ」
「はぁ? 自分で言うか! ……でもまあ、そうだな。お前のこと可愛いって言ってる男子、案外多いみたいだし。そのうち早まった誰かが言ってくるかもな」
「早まった誰かって失礼な言い方!」
「まったくこんなおてんば娘のどこがいいんだか」
そんなため息交じりで言われても、ただムッカリするだけなんですけど!
「はぁ? 萌ちゃんをバカにするなよ。これでも……」
「はいはい」
なんだそれ、自分から聞いてきたくせに勝手に話を終わらせるなんて。
ここは冷静に対処してやろう。
「まだ話は終わってはおらぬ」
「私には終わりましたでござる」
「では、よきにはからえ」
「意味不明~」
相変わらず話が見えぬ。まあ、諄くないところがいいところでもあるのだけど。
「俊こそどうなの? 好きな娘とかいるの?」
「うーん、まぁ、いなくもないかな」
「へーえ、そうなんだ」
「で、告白とかしないの?」
「さあ、どうかな。下手に告白とかして今の関係が壊れるのもなんだしな。まあ、相手のいることだし、今の段階ではなんとも」
「意味不明~」
「解ってたまるか!」
「解りたくもないけど」
確かに楽しい。俊と話していると時間を忘れてしまうくらいに。
「もう、宿題間に合わないじゃん!」
「そんなの家でやってこいよ」
ごもっとも。
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