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5 返事
私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。
そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。
そしてそれが当り前のことだと思っていた。
お昼休み、約束通り俊は屋上に来ているのだろうか。
美咲と私は屋上に続く階段を上り、恐る恐るドアを開けてみた。
……俊は来ていた。
一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに表情はいつもの優しい笑顔に戻っていた。
「おう」
「うん」
「で、話って?」
「私じゃなくて……」
美咲の方を見ると、やけにもじもじしながら俯いている。
その様子を見て察したのか、俊が美咲に話しかけた。
「話があるのは美咲ちゃんの方?」
コクンと頷いて美咲はひとつ、大きな深呼吸をする。
「あ、あの! 好きです。付き合って下さい」
そう言って、お願いしますと言わんばかりに、腰を90度に曲げるほどのお辞儀をしている。
ふう、とため息をついて俊は真面目な顔をして私に聞いてきた。
「お前はいいのか?」
「え、なにが?」
「俺と美咲ちゃんが付き合っても」
「なんでいちいち私に聞くのよ」
「いや、別に。俺が美咲ちゃんともし付き合ったら、もう一緒にはいられなくなると思ってさ」
あ、そうなんだ。
俊に恋人ができたら、今までみたいに私なんかと一緒にいられるはずはない。当然その恋人、即ち美咲と過ごすことになる。
そんなこと解りきってるはずなのに、今の今まで気づかなかったなんて。
今更どうすることもできないし、いつかはそんな日がくるとは思っていたけど、それが今だなんて。
でも、もう後には引けない。
「そりゃあそうでしょう。で、どうすんの? あんまり返事遅いと美咲、泣いちゃうよ」
「本当にいいんだな」
「いいですよ」
心にもない返事をしてしまった。
美咲の気持ちを考えると、それ以外の選択肢は私にはない。
ああ、俊はオーケーするんだろうな。告白したのは美咲なのに、私の方まで緊張してきた。
なぜだか意味の解らない胸騒ぎと胸の高鳴りで、この場に立っているのがやっとのことだ。
だけど、俊の答えは意外なものだった。
「美咲ちゃん、俺はまだ美咲ちゃんのことをよく知らないんだ。だから、付き合うっていうよりも、友達になろうよ。後のことはそれから……っていうんじゃダメかな?」
美咲は泣きながら大きく首を横に振った。
「断られると思ってたから、友達でも充分です。これからよろしくお願いします!」
『友達になろうよ』って。じゃあ……。
俊はチラッとこちらを気にかけたが、美咲の方に歩み寄って口を開いた。
「こちらこそよろしく。じゃあ、これからは3人組ってことかな?」
「なっ、どういうこと?」
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