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1 幼馴染み
私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。
そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。
「おはよう」
「おはよう」
そして今日もいつものように一緒に学校へ行く。
「お前どうしたんだ?」
「なにが?」
「なにがって。なんで左手で前髪押さえて歩いてんだ?」
「そうしたいから」
だって、今朝は寝坊して、ふんわり内巻にセットする時間がなかったんだもん。
ああ~萎えるぅ。
前髪って大事。特にお年頃の女子には大事なことなんだから。前髪の出来具合で1日がウキウキにもションボリにもなるんだから。
だから今日はションボリ。それを指摘されてちょっとムッカリ。
「ちょっと見せてみ」
そう言って彼はなんと、私の左手を掴んで前髪から引き離したではないか!
や・め・て……。
今生の別れを惜しむ左手と前髪をよそに、幼馴染みの彼、俊介は、私の顔を覗き込んでくる。
「もう、俊ったら、やめてよ!」
俊の手を振りほどいてまた左手は無事前髪との再会を果たした。
「なんで押さえてんだ?」
まだ聞く?
まあ、男子には解らないことかもしれないから教えてあげましょうか。
「今日は前髪の虫の居所が悪いの!」
「前髪のセットができてないってことか?」
「まあ、簡単に言えばそうだけど」
「お前さ、もっと簡単に言ってくれる? 朝から頭使うと疲れちゃうんだよな」
「いやっ、簡単に言ってるよ。想像力の問題だな」
「はいはい。どうせ俺は想像力に乏しいですよ」
いつもこんな調子で学校までの15分間を過ごしている。
私には子供の頃からの大の仲良しがいる。いつもずっと一緒にいた。
そう、雨の日も風の日も晴れた日も曇りの日も。春も夏も秋も当然冬も。
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