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世の中の理に反してしまう。それでも、この気持ちを抑えきる自信はない。
誰からも祝福されない。認められない。なのに太一は、まっすぐ僕の目を見つめて言うんだ。
「俺はコタが好きだ」
まいった。観念するしかないみたいだ。僕よりも大人な太一が言ってくれた。そんなの、甘えちゃうじゃないか。
「······僕もだよ」
「え?」
「だからぁ、僕も太一が好きなの」
「うっそだ〜」
「ほんと。いつからかわかんないけど、いつの間にか好きになってたんだ。まぁ、自覚したのはキスのおかげだけどね。一晩、寝ずに自分と向き合ったから」
「コタくん、怒ってます?」
「ぜーんぜん」
「怒ってんじゃん」
「怒ってないよ。だから、もう1回····キスして? そんで、今度はちゃんと覚えてて」
僕と太一は恋人として、再び唇を重ねた。
1枚ずつ仮面を外していくかのように、僕の知らない太一が次々と顔を見せる。太一の恍惚な表情は、まだこの先を知らない僕でさえ昂らさせた。
腰を引き寄せる手の温もりから、ゾクゾクとしたものを感じる。きっと、僕もそんな表情をしていたのだろう。太一が頬を紅潮させ、そっと僕のTシャツに手を忍ばせた。
そうだ、ちゃんと言わなくちゃ。
「太一、ちょっと待って。先に言わなくちゃいけなくって」
「ん? なに?」
ねっとりと絡みつくような、耳元で響く甘い低い声。大人の男の人だ。耳が熱くなって思考が止まってしまう。
ダメだ、言わなくちゃ。
「あのさ、僕が昨日太一に犯されたの、口だけだよ」
「······ん? え? え!? 俺、お前の口に突っ込んだの?」
「······っ! ばっ、ばーか!! 違うから! キスしかしてないんだよ! まぁ、めっっっちゃ濃いやつだったけど!?」
「はぁぁぁぁぁ!? そんだけ? いや、充分問題だけれども! なーんだ、てっきりイクとこまでイッたのかと······」
「バカ太一」
「じゃあまぁ良かったわけだ。これからちゃんと、初めてを食べれるんだよな」
太一はそう言って、また僕に跨った。そして、厭らしい大人の表情で僕を見下ろす。
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