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「お、俺も就職について何も言わなかったから……俺だって悪いと思うんだけど…でも、俺は…ノ、ノブとは、離れるつもり、な、なんてなくて…。」
次第に震える声が酷くなる。
「こ、これからも…い、一緒だと、お、思って、て……。」
「ヒロッ、ごめんっ。」
座っていた俺の腹の部分に顔を押し付けるようにノブが抱き着いてきた。
腰に回された手は力強い。
「ごめんっ、ごめんっ。そんなつもりなんてなかった。俺だって、ヒロとずっと一緒にいるつもりだった!」
ノブの声も震えていた。
「俺っ、お前と別れるなんて考えたこともないっ。ヒロがいない将来なんて想像したこともないっ。」
「じゃ、ど、どうして?」
「起業の事は、ちゃんと決まってから伝えようと思ってたんだ。上手く行くかも分からなかったし…会社として設立してから言うつもりだった。」
「何で?どうして全部終わった後なの?俺だけ蚊帳の外?」
「そんなつもりないっ。」
「でもっ、俺だけ知らなかった!清水も小島も知ってたのに、俺だけ…俺だけ教えてくれなかったじゃないかっ。設立した後なんて…相談もしてもらえなかったって事じゃん。ノブが忙しくて苦しい時も俺だけ何にも知らなかったって事じゃん。」
……それって俺にはノブの人生関わってほしくないって事と同じじゃん…。
小さく呟いた言葉にノブはハッと息を吐いた。
「ほ、本当にそんなつもりなかったんだ…。俺、ヒロの前ではカッコいい自分でいたかった。何でも出来る凄い奴だと思われたかったんだ。」
「そんなの…。」
「だって!ヒロは俺の事何でも出来るって言うだろう。キラキラした目で俺を見てくれるヒロを失望させたくなかったんだよ…。」
項垂れてそう言われて、俺も同じようにハッとした。
「かっこ悪い俺を見せて、ヒロに幻滅されたくなかった…。……お前に嫌われたくない。」
「…………‥‥。」
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