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今だってニヤつく顔をしながらも、俺のグッと握った拳を俺よりも大きな掌でやんわりと握り、無意識なのか親指で優しく撫でる。
ゆっくり、ゆっくり。
二度三度と撫でられるその感触に俺はちょっとささくれだった気持ちが落ち着くのを感じる。
ガキの頃から一緒にいて、小、中、高と同じ学校に通い、それこそ黒子の数だって知ってるんじゃないか、なんて思う幼馴染み。
受験する大学も学部は違えど同じ所で。
ここまで来たら一緒に住もうぜ。なんて示し合わせたように双方の両親に掛け合えばスンナリOKがでちゃうぐらいには信用度もお互いに高い関係。
気心の知れた関係は、家族以上に気を使わないようで、俺たちの同居生活はほぼ何の問題もなく数ヵ月が経っていた。
「ヒロ、どうした?」
俺の手を握りながらそう顔を覗き込む男は目元にまだ笑みを浮かべていたが、今のやり取りでどうやら覚醒したようだ。
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