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まるで起きたまま夢を見ているような、そんな時間だった。仕事の疲れを忘れさせてくれるような、そんなひと時だった。
彼女を見かけるようになってからというもの、家に帰りついてシャワーを浴び、缶ビールをひと缶開けてベッドに横たわると、ぼくは必ずと言ってよいほど、ある考えに囚われるようになった。そしてそれはどんどん、確信の度を増して行った。
ぼくは、彼女に会った事がある。
ほぼ終電で帰宅したその夜、ぼくは子どもの頃の夢を見た。ふわふわとした画質の夢の中で、そこだけはっきりと見えているものがあった、それは小学五年生頃の夢で、ぼく達は地区にあるサッカークラブの練習に来ていた。男女混成のそのチームで、ひとつ上の六年生に、一人だけずば抜けて身体能力が高い女の子がいた。男子を軽々と抜いていくステップに驚いたものだった。
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