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彼女のことは、仮にYと呼んでおく。
Yには幼稚園の頃からの友だちがいた。その子はメグちゃんといって、とても可愛らしくて優しい子だった。
一緒にいるととても楽しくて、Yはメグちゃんと遊ぶのが大好きだった。
だがしばらくしてYは、メグちゃんがちょっと人とは違うことに気がついた。
メグちゃんの部屋にはいつも、クマのぬいぐるみが置いてある。たいていは、テーブルや勉強机の上、もしくはベッドに。
それだけなら女の子らしくて可愛いのだが、メグちゃんはいつも、そのぬいぐるみのことを「メグ」と、自分と同じ名前で呼ぶ。
Yが理由を尋ねたとき、メグちゃんは平然とした顔で、
「だって、同じだから」
とだけ、答えたという。
さらに不思議なのが、お菓子を食べるときやジュースを飲むとき、必ずこのぬいぐるみの分も用意したそうだ。
Yとメグちゃんの二人で遊ぶときも、お皿やコップは三つずつ、必ずメグちゃんのお母さんが用意してくれた。
そしてメグちゃんはいつも、
「はい、メグ」
と言って、ぬいぐるみの前にお菓子やジュースを差し出す。
小さい頃だったら、ごっこ遊びか何かだと考えられただろう。
しかしその習慣は、小学三年生になっても続いていたという。
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