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びくっ、と肩を跳ねさせながらも、誰か来てくれたと安堵するY。
「はい?」
「わたし。ねえ、入ってもいい?」
「ああ、メグちゃん」
扉越しの声に、メグちゃんが帰ってきたんだ、と安心して立ち上がる。
「ねえ、入ってもいい?」
「待って。今、開けるから」
「ねえ、入ってもいい?」
「待ってね……」
どうも様子がおかしい。Yはドアノブを握りかけた手を止めた。
部屋のドアには鍵がついていないので、入りたければ勝手に入ってくればいい。そもそも、自分の部屋に入るのに許可を得る必要があるのか。
それに、先ほどからドア越しに聞こえる声。メグちゃんに似ているが、これはむしろ、ぬいぐるみから聞こえていた声のような気がする。
「ねえ、入ってもいい?」
そういえば、メグちゃんはいつ帰ってきたのだろうか。玄関の方から、物音は聞こえなかった。
なんだか恐ろしくなったYは、
「だめ!」
と叫びながら扉を押し開けた。
そこには、誰もいなかった。
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