Sixth

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「チーフ!ちょっとこっち!」 「何!?白石ちゃん」 白石ちゃんに無理矢理腕を引かれて連れて行かれたのはトイレで。 「見ました!?あの課長の笑顔!めちゃくちゃにかっこよかった……眼福通り越して輝いていて直視できませんでした……!」 「……いや、余韻に浸ってるところ悪いけどあれただの営業スマイルだと思うんだけど……」 むしろ怒ってただけだと思うんだけど……。 「あ、やっぱりそうなんですか!?いやでも流石課長ですね!あのお綺麗な笑顔があれば取引先なんてイチコロですもんね!そんな貴重な笑顔が見られただけで私は満足です!チーフありがとうございます!」 「いや私何もしてない……」 「細かいことはいいんです!じゃ!私帰ります!お先に失礼しまーす!」 「……何なのあの子は……」 嵐のように去って行った白石ちゃんをぽかんと見つめる。 なんだか頭が痛くなり、コーヒーを淹れようと給湯室へ向かった。 「……あ」 「……」 思わず溢れた声の先には、綾人さんの姿。 給湯室で既にコーヒーを淹れていたようだ。 なんとも気まずい気持ちを抱えながらもその横に立つと、 「あの……さっきはありがとうございました」 小さく告げる。しかしそれには何も返答は無く。 探るように隣を見上げると、不意にカップを渡されて条件反射で受け取った。 「……課長?」 「先約って?」 「……相田と飲みに」 「ならいい。……あんまり妬かせるな」 ポン、と私の横を通りながら頭に置かれた手はすぐに離れていって。 振り返ると何事も無かったかのように自分のブラックを持って営業一課に戻ろうとする綾人さんの姿が。 言われた言葉の意味に気が付き、赤くなる頬を腕で隠す。 なんだか悔しくて、渡されたカップを口に傾けた。 「……ずるい」 カップの中身は、ミルクたっぷりの私好みの甘いカフェオレで。 私の顔は赤く染まる一方だった。
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