Eighth

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「それから、歩の行動が目につくようになった。最初は危なっかしかったけど仕事も少しずつ良くなってきて。相変わらずミス指摘したら睨まれてたけど。でもそうなったら今度は他の社員からの人気が凄くてな」 「……人気?」 「聞いたことないか?お前のファンだっていう男、結構いるんだよ」 「……白石ちゃんから聞いたことがあるような、ないような」 正直そんな話すっかり忘れていた。私に隠れファンがいるとかいないとか、そんな話だったっけか。 誰かが確か似たような話、していたような気がする。 「他の男が歩のこと話しててな。"金山さんって今フリーだと思いますか?"って、飲み会で何回聞かれたことか」 「そ、そんなことがあったんですね」 全く知らないところで自分の話が出ていただなんて。 「……それが堪らなく嫌だったんだ」 ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。 「歩がフリーだったら狙うのか?とか社内の誰かが歩と付き合い始めたら俺にはもうコーヒーは淹れてくれないのか?とかどうでもいいことも酒飲みながら色々考えた」 「……」 「歩の隣に、そいつが並んで歩いているところを想像した。他にも歩のことを綺麗だって言ってた奴らで想像してみた。……吐き気が来るくらい、嫉妬に狂いそうになった」 まさか綾人さんがそんな嫉妬を感じていたなんて。全く知らなかった。 「でもその時にやっと気付いたんだよ。"あ、俺金山のこと好きなのかもしれない"って」 改めてそう言われると、恥ずかしくて照れる。 「金山をとられるかもしれないって、一気に不安になって。それで自覚した」 「……」 「でも当時、プライベートな話なんて全くしたことが無かったから歩に彼氏がいるのかも知らなかった。多分いるんだろうなとは思ってたけど、確信が無かった。いるならいるで、仕方が無いと思った。諦めるつもりだったんだ」 でもあの日、婚約者に振られたって泣いてる歩を見たら、もう止められなかった。 そう呟いた綾人さんは、私を見て悪戯っぽく笑う。
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