Eighth

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「……結構最近ですよ。でも入社して初めて会った時から、かっこいい人だなって思っていました。 ただ私、社内の人と付き合うと別れた後色々と面倒臭そうでずっと避けてきたんですよ」 「……確かに、"金山さんに話しかけたら事務的対応しかしてもらえなかった"って嘆いてる社員がいたな」 「……それは初耳ですね」 誰に対しても似たような感じしかしてこなかったからだろう。 「だから綾人さんと会場で会った時も、純粋に嬉しかったんです。まぁ、スイーツ仲間ができた、くらいの軽いものでしたけど」 「だろうな」 「ちゃんと自覚したのは、恭子さんと会ってからですね」 「恭子と?」 あの時の気持ちを話すと、納得したように綾人さんは頷いた。 「あの時に気が付いて、その後相田に駄目押しくらって。ようやくはっきりと自覚した感じです」 「……相田には色々と世話になったみたいだな」 「はい。相田には昔から助けてもらってばっかりで。もう足向けて寝られません」 「ははっ、そうか。じゃあ俺も相田にお礼言っておかないとな」 「相田、ニヤニヤしながらからかってきますから気を付けてくださいね」 「……肝に銘じておく」 相田には、本当に感謝している。 揶揄ってきてうざったい時もあるけれど、それもまた楽しい日々だ。 「そういえばもうすぐですね。相田の結婚式」 「そうだな。当日晴れるといいんだが」 「大丈夫ですよ。相田は晴れ女ですから」 「なら安心だ」 笑い合って、自然と会話が無くなって。 そのまま目の前に視線を戻す。子ども達の姿をボーッと眺めていると、ポツリと綾人さんが溢す。 「……歩は、子ども好きか?」 「子どもですか?はい、好きです」 可愛いですよね。と頷くと、綾人さんは微笑む。 「こんなこと言ったら気持ち悪いって、引くかもしれないけどさ」 「……?」 「俺、家庭を持つなら相手は歩だ、って決めてるから。歩とでしか考えてないから」 真剣な眼差しが、私の心を射抜く。 はぐ、と声にならない声を飲み込む私に、綾人さんはほんの少し頰を染めた。 「……それは、つまり」 プロポーズですか? その言葉は、木陰に隠れるように落とされた甘いキスで言えなくて。 まだ付き合い始めたばっかりなのに。もう、私との未来を想像してくれているの? 綾人さんの思い描く未来に、私がいるの? 「まだ付き合いたてだけど。一緒にいればいるほど感じる。俺は歩じゃなきゃダメだって」 「……綾人さん」 「……こんなところで、こんなタイミングで、なんて。……引くか?」 言葉につまり、首を横に振る。 すると腕を引かれて、耳元で綾人さんが呟く。 "俺は、歩と一緒に生きていきたい" 綾人さんの低い声と甘い言葉に頭がクラクラしてしまう。 喧騒の中なのに、ここだけ切り取られたみたいに周りの声も音も何も聞こえなくなって。 「……私も、綾人さんと一緒に生きていきたいです」 恥ずかしさに負けそうになりながら呟くと、綾人さんが一つ、笑う。 その笑顔がとても綺麗で。綾人さんの隣で、その笑顔をずっと見ていたいと思った。 「いつかその時が来たら、もう一度言うから」 私はその言葉に、目に涙を浮かべながら大きく頷いた。
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