Ninth

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「あ、白石ちゃん。久しぶり」 「"あ"じゃないですよ金山さん!お久しぶりです!」 「何、どうしたのそんな怖い顔して」 久し振りに会った白石ちゃんは、何故か怖い顔をしている。その割に挨拶は怠らないあたり、やっぱり面白い子だ。 「何……え、ちょ、どうしたの」 聞くものの何も言わないままずんずん近付いてくるものだから、何か怒られるのかと思わず身構えた。 しかし白石ちゃんは目の前まで来ると、何故か私の耳元に顔を寄せる。 「……白石ちゃん?」 困惑する私を他所に、白石ちゃんは囁くように聞いてきた。 「ずっと聞こうと思ってたんですけど」 「え、うん……何?」 「……やっぱり、金山さんの前では課長って笑うんですか?」 「……は?」 間抜けな声が出た。拍子抜けしたと言った方が正しいだろうか。 顔を離した白石ちゃんは、怒っているようなワクワクしているような……なんとも言えない表情で早く言え!と圧力をかけてくる。 え、というか気になるのそこなの? 「どうなんですか!教えてください!ずっと気になってるんです!」 必死な様子が何故だか笑えてきてしまって。 お返しとばかりに白石ちゃんの耳元に顔を寄せて、一言囁き返す。 その瞬間、白石ちゃんは力が抜けたようにガクッと項垂れた。 「うわー……何ですかそれ。幸せオーラ全開じゃないですか。眞宏さんも一年経っても幸せ増してるし……。なんですか皆さん、何でそんなに幸せそうなんですか……。羨ましい。私も幸せになりたい……。なんか脱力しました」 失礼ながらそれが面白くて笑っていると、すぐにパッと顔を上げる。 「でもやっぱり私もそんなこと言ってみたい!よし!幸せお裾分けしてもらったって考えて、また出会いを求めて合コン開いてお二人に負けないくらい幸せになってみせます!」 「う、うん。頑張れ」 その切り替えの速さは相変わらずだ。 「じゃ、金山さん!失礼します!」 「はは、またねー」 逞しい後輩の姿に、私も元気をもらって手を振る。 するとすれ違うように眞宏が私を見つけて走ってくる。
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