Ninth

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「あ、金山、ちょうど良かった。ランチ行こ!……ん?どうかした?」 「眞宏。お疲れ。ちょっと白石ちゃんに絡まれてた」 その一言でどんな会話があったのか察したのか、眞宏は面白そうに笑う。 「ははっ、白石ちゃんは今でも課長ファンだからね」 「個人的にはなんとも複雑ですけど」 「何を言うか。お互いのことしか見えてないくせに」 「なっ……」 恥ずかしさに眞宏の肩をバシンを叩くと、私の反応が面白いとばかりにまた笑い出す。 「まぁ、今じゃ白石ちゃんも立派なチーフだからね」 「そうだね。頼もしいよ」 「私からすればまだまだひよっ子だけどね」 「うわー、眞宏は厳しいねー」 「でも、どうしても金山と比べられちゃう中でよく頑張ってると思うよ」 「……それ、本人に言ってあげなくて良いの?」 「だめ、それで調子乗られたら困る」 「ふはっ」 苦虫を噛み潰したような眞宏の表情が面白くて、笑いが止まらない。 「まさか金山が白石ちゃんを指名するなんて思ってなかったからね」 「ふふっ……そうかな。私は白石ちゃん以外思い付かなかったけどなあ」 異動の時、私の後任には白石ちゃんを指名していた。 最初は"チーフ!?私がですか!?いやいやいや絶対無理です!私にはできません!"と叫んでいたものの私が譲らなかったこともあり、指名されてしまったものは仕方ないと毎日頑張ってくれているようで安心している。 今では結構頼れるチーフになってきているようで、私も嬉しい限りだ。 「今日も定食でいい?」 「もちろん、行こ」 眞宏と並んでいつもの定食屋に向かいながら、白石ちゃんに返した言葉を思い出す。 "それは秘密" そう答えたなんて言ったら、綾人さんは何て言うだろうか。 でも、皆の前ではまだ笑わない飛成課長でいてくれないと困るし。綾人さんの素の笑顔を、誰にも知られたくない。 ライバルは少ないに越したことが無いし、ね? 彼の秘密を知っているのは、私だけでいいから。
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