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Second
翌週の月曜日。
いつも通り仕事をしつつ、数日前に課長から教えてもらった自宅とは反対方面のプリン専門店に仕事終わりに行ってみようと意気込んでいた。
約束通り課長が超甘党だという事実は、誰にも口外せずに私の中だけに留めている。
まぁ、課長の話を表立って聞きたがるのは白石ちゃんくらいのもので。多分言ったら色んな意味でうるさくなって仕事に支障を来たしそうだ。
だから誰にも言うつもりは無い。
課長からはちょくちょくアイコンタクトを感じるものの、最初こそちゃんと反応していたけれど途中から面倒になり、数時間後からはそのまま放置している。なんて最低な部下なのだと自分でも呆れたものだ。
毎日のコーヒーも、カフェオレにしようかと提案したものの"今まで通りブラックでいい"と言われたため特に変えずにブラックを淹れている。
なるべく苦味が出ないように色々と淹れ方を調べて工夫しているが、インスタントだから特に変わりない様子。やはり飲んだ後の眉間のシワは健在だ。
それなら甘いの飲めばいいのに。
課長は何故か頑なに拒む。
そんな日の昼休み。相田といつもの定食屋でランチをしていると優から連絡が。
"大事な話があるから時間を作ってくれないか"
それをしばらく無表情で見つめていた私に、相田が口を開く。
「金山?どうかした?」
「───いや、何でもない」
首を横に振って笑うと、相田は安心したようにまた食べ進める。
それを確認して、私はスマホで文字を打ち込み始めた。
"わかった。明後日でもいいかな?"
送信のボタンをタップして、一息つく。
明後日は水曜日。うちの会社は水曜日はノー残業デーと決められている。
まぁ、その分毎週月曜と火曜は大体残業になってしまうのだが。
そしてスマホを鞄に戻そうと思った時に、ブルっとマナーモードが震えた。
"わかった。じゃあ明日の夜にまた連絡する"
"うん、わかった"
そう返事をして、スマホをそっと抱きしめる。
───何だろう。この時、凄く嫌な予感がしたんだ。
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