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そして二日後。
約束の、水曜日の夜。
私はあのプロポーズされたフレンチのレストランで、優と静かに食事をしていた。
話って、なんだろう。
先程から優の表情は晴れない。
でも、なんとなくわかる。
優は嘘がつけないタイプの人だ。
……だから、きっと良い話では無いのだろう。
しかし待てど暮らせどまったく話し始める様子もない優。気が付けば紅茶とプティフールも食べ終わってしまう。
さすがに話を切り出さない優にイライラが募り始めた頃。
「……あの、さ……」
とようやく優が切り出した。
「───俺と、別れて欲しい」
……私の耳がおかしくなったのかな?
聞き間違いかと思うほどの、衝撃。
「……は?」
思わず聞き返した私の顔は、大分歪んでいると思う。
予想外?いやいや、そんな甘っちょろいレベルじゃない。
まさに、青天の霹靂だった。
「……何言ってるか、自分でわかってる?」
思わず上擦った声。視線を下げたままの優は、今にも泣きそうになっていた。
「本当に、ごめん」
謝られたって、何を言っているのか全く理解できない。泣きたいのはこっちだ。
叫びたい気持ちをグッと堪えて、拳を握りしめた。
「……どういうことか、一から説明して欲しいんだけど」
どうにかそう話を促す。
私の言葉にようやく顔を上げた優は、その目を見るだけで私の反応に怯えているのがわかった。あたりまえだ。この間プロポーズしてきたのは優なんだから。
「……実は、母さんに歩のこと、紹介しようと思って。"結婚したい人がいる"って言ったんだ。
そうしたら───」
優の話は、こうだ。
"結婚したい人がいる"
そう聞いた優の母親は、驚いて一瞬動きを止めたと言う。
その日は何も言われなかったらしいものの、何故か数日後に、大反対し始めたと言うのだ。
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