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「……わかった」
「……歩?」
薬指に嵌めてきた婚約指輪を抜き、鞄の中からケースを取り出して入れる。
それをそのまま優の目の前に差し出した。
虚な目でそれを見つめる優に、財布の中から一万円札を出して、それも置く。
「そっちの家にある私の私物は全部捨てておいて。こっちにある荷物は捨てる?送る?」
「え……」
「どっちでもいいなら捨てるね」
「ちょっと……」
「……今までありがとう」
「あ、歩っ!」
条件反射か、何故か私を引き留めようとする優の声を無視して、その場を後にした。
優は、後を追ってくる事は無かった。
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