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日付が変わる頃、飲み終わって再び洗面所を借りてからリビングに戻ると、ソファで横になろうとしている課長の姿が。
「俺はこのソファで寝るから、お前はさっきのベッドで寝ろ」
「そんなっ、家主差し置いてベッド借りるなんてできません!」
「だからそういうのは気にするなって言ってんだろ」
「気にします!私がソファで寝ますからベッドで寝てください!」
「あぁもう、しつこいな」
言うが早いか、課長はまたも私の腕を掴み立ち上がり。
リビングの電気を消してそのまま寝室へ。
「か、課長?」
「客人をソファで寝かせるわけにはいかないからな。強制連行だ」
「なっ」
言い返そうとするものの、足を止めて視線が真っ直ぐ交わると何も言えなくなる。
「言っただろ。……ほっとけないって。大人しくベッドで寝とけ」
「……」
真剣な声色でそんなことを言われたら、変に勘違いをしてしまいそうで。
思わず頬を染めた。
でもまさか、課長に限ってそんなはずは無いだろう。
促されるようにベッドに腰掛け、布団の中に身体を滑り込ませる。
布団に入るとすぐに瞼が重くなってきて。
そのまま睡魔に身を委ねればいいものを、さっき寝た時に怖い夢を見たことを思い出す。
内容は全くわからないそれを思い出すと、何だか脈が早くなるような感覚がして。
何故か子どもみたいに急に人恋しくなった。
「……金山?」
私が寝そうになっているのを見て部屋を出て行こうとした課長。今度は私がその腕を掴む。
戸惑ったような声に、思わず手が少しだけ震えた。
「どうした?」
──お酒は時に、人を大胆にさせるものだ。
「……かちょー」
「……ん?」
「……一緒に寝てくれませんか?」
課長は目を見開いた。
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