Third

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Third

「……ん」 どこか遠くから聞こえるいつものアラーム音。 それを止めようと顔の横をペタペタと探る手。 いつもなら手の届くところに置いているのに、今日は中々見つからなくて。 数十秒してやっと手に当たったスマホに手を伸ばし、なんとかアラームを止める。 眠くて開かない目。それを無理矢理こじ開けると目の前には綺麗な寝顔のドアップが。 「っ!?」 驚いて思わずバッと起き上がる。すると自分の一糸纏わぬ姿が目に入り、慌てて布団の中にもう一度戻った。 ……待って待って待って待って。 一気に目が覚めるとはこのことか。眠気などどこかに吹き飛んだ。頭の中はパニックで手が震える。 冷や汗が止まらない。 私の慌ただしい動きのせいで目が覚めたのか、隣の影が軽く伸びをして。 薄く開いた目。 「……はよ」 「……おはよう、……ございます」 いつも以上に低い声に、また心臓が激しく動き始めた。私の上擦った声に課長は完全に開ききらない目が垂れる。 「あ、の……私、昨日……」 お互い何も着ていない姿。腰の鈍痛。 何があったのかは一目瞭然だ。 「ん?あぁ……まさかお前から誘ってくるなんて思わなかったな」 バッチリと昨夜の情事を思い出してしまって、顔から火が出そうになる。 いくらなんでも優と別れたその日に……!これじゃただの痴女だ……! 恥ずかしさと後悔と、よくわからない感情で顔を真っ赤にしながら声にならない声を叫ぶ。 課長はそんな私を見て。 吹き出すような、そんな声が聞こえた気がして顔を上げた。 「ははっ……本当お前、面白いな」 くしゃっと目尻に皺が寄って。いつも下がっている口角が上がって。その奥から見える、白い歯。 初めて見る課長の純粋な笑顔は、思っていた以上に幼くて。 ぶわあ、と言葉にできないくらい、全身の感情が昂る。 「……どうした?」 「……あ、いや」 「ん?」 「……課長って、笑うんですね」 「なんだそれ。そりゃあ俺も人間だからな」 「初めて見たので、びっくりしました」 そう言うと穏やかに微笑んだ課長。 それが凄く綺麗で、なんだか嬉しくて。 「……課長の笑顔、素敵ですね」 つられるように、私も笑ってしまった。
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