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「さぁ!詳しく聞かせてもらうわよ!」
「いや、そんな面白い話じゃないんだけど……」
「面白いかどうかは私が決める!」
「んな横暴な……」
終業後。相田に引き摺られるように拉致された私を同僚達は可哀想なものを見る目で見ていた。
助けて!と同僚たちに視線を送ったものの、皆一様に目を逸らされたのがなんとも切ないやら、憎たらしいやら。
とは言え、ここまで来てしまったものはもうどうしようもない。
駅前にある行きつけの和食居酒屋で向かい合いながら運ばれてきた刺身を食べつつ、お猪口に注いだ甘口の日本酒を一口飲んだ。
「ほら!早く話して!」
「は、はい……」
何から話せばいいか、考えている間にも目の前から急かすような声が聞こえ、面倒になって最初から話し始めた。
───私には、付き合って三年になる彼氏が
いる。
出会いはまぁ、友達の紹介なんて言えば少しは聞こえが良いけど、要は合コンだ。
大学時代の友達に頼むから来てくれと半強制的に連れて行かれた先、そこで同じように人数合わせで来ていたのが今の彼氏、優だ。
私はその時、前の彼氏と別れて数ヶ月しか経っておらず、まだ新しい恋人を作るなど全く考えていなかった時期。
正直頼み込まれたから行っただけで相手の男性陣などどうでもよくて。放っておいて欲しかったというのが本音。
優は優で、女運が無いとかで誰かと付き合っても最終的に振られてしまうことが続き、傷心中だったらしい。
そんな人数合わせ同士の私達は、盛り上がる周りとは一枚壁を隔てたような、不思議な距離感があった。
私は特に会話に参加する事もなく黙々と食事をして時間をやり過ごし、参加していた男性陣に対しても全く興味がなかった為自分をよく見せようともせず。
しかし何故かそれが優の目に止まったらしく、連絡先の交換を頼まれたのがきっかけで仲良くなった。
最初は全くそんなつもりも無かった私だが、優しくて爽やかで話を聞くと他業種の営業としてバリバリ働いているらしく、私の方が二歳年上だけど別に気にするようなことでもないし、普通に話も合う。
数回デートを重ねて告白され、付き合うことになった。
それから大きな喧嘩も無く付き合うこと早三年。
"話がある"と言われ、仕事終わりに待ち合わせ場所に向かうと車に乗せられ、いつだか雑誌に載っているのを一緒に見た夜景の見えるフレンチレストランへエスコートされて。
穏やかに食事が終わった頃、緊張した面持ちの優から指輪を渡されて"結婚してください"とプロポーズされた。
輝くダイヤモンドの指輪。誰もが知る高級ブランドのそれは、私の人生では一生縁がないと思っていたもので。
人生で初めてのプロポーズとその見るからに高級な指輪にまず驚いて、"え、あ、はい。私で良ければ。よろしくお願いします"とびっくり顔のままか細い声で受け入れたのだった。
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