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「おはようございます課長」
「おはよう。……いつも悪いな、ありがとう」
「いえ、お気になさらず」
いつも冷静であまり感情を表に出さないタイプの課長は、コーヒーを飲んだ時にだけ少し、眉間の皺が濃くなる。
本人はそれに気が付いていないようだけど。
「チーフ、おはようございます」
「白石ちゃん、おはよう」
「飛成課長……今日も眼福ですね……」
「眼福って……」
「だってあんなに綺麗な顔の人、私今まで出会ったことないですよ!?」
「まぁ、確かにそれはそうかもしれないけど」
「だから毎朝目の保養です……!」
後輩の白石ちゃんは、入社以来飛成課長の大ファンを公言している。
ただそれは、"好き"とか"付き合いたい"というようなものではなく、単なる"顔ファン"なんだとか。
しかもそれは本人にまで知れ渡っており、しかし飛成課長自身は全く興味無さげにスルーしている。それでもこうなんだからお互い凄いメンタルをしていると思う。
きっと白石ちゃんの他にも、公言していないだけで飛成課長の隠れファンは沢山いるのだろう。芸能人かと突っ込みたくなってしまう。
「あれでちょっとでも笑ってくれればなあ……。んー、もったいない!」
皆の口癖は、それだ。
端正な顔立ちをしているのだから、あれで笑顔がプラスされたらそれはもうモテるだろう。
営業に行った取引先ではモテモテだと専らの噂なのだから。
しかし入社以来、幾度と無く指導という名のお説教を受け続けてきた過去がある私としては飛成課長が笑っている姿など想像もできず、なんとも複雑な心境だ。
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