Fifth

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着いた先はいつぶりかの課長の自宅マンションで。 繋がれた手はそのままに、滑らかにオートロックを開けてエレベーターへ。 七階で降りて小走りで廊下を進み、704号室へ。 入った途端、玄関ドアに体を押し付けられた。 ふわりと私を包む課長の香り。 「……んっ」 触れた唇。すぐにそれは深くなって。 私の顔に添えられた左手が、顔を横に背けることは許さないと言っているのを感じる。 空いた右手はドアの鍵をゆっくりと閉めて、私の太ももをいやらしく撫でていた。 徐々に上がる息。恥ずかしくて、気持ち良くて、苦しくて。 離れたと思って呼吸を整えているとすぐにまた手を引かれ、靴を脱いで鞄を取られてその辺に置かれた。 連れて行かれた先は寝室で。 ダブルベッドに仰向けに押し倒される。 顔の両隣を大きな手が囲み、真上からその端正な顔立ちが私を見下ろしていた。 「……課長」 「違う」 「……綾人、さんん!」 言い終わる前にまた甘いキスが降ってきて。 気が付けばその大きな手は私の頬を撫でていた。 気持ち良さに頭がおかしくなりそう。 どれくらい経ったか、ようやく離れた唇に、ゆっくりと目を開けた。 「……これは、どういう意味のキス、ですか……」 初めて聞いたキスの意図は。 「……言わなきゃわかんない?」 「……はい」 「……意味も何も、好きな奴にキスして何が悪い」 顔を真っ赤に染めながらもぶっきらぼうにそう言った課長。それは私が欲しくてたまらない答えで。 「えっ……それって」 その先は言わせてもらえず、再び降り注ぐ甘いキスに身を捩る。 お互いの呼吸が混ざり合い、その細長い指が背中から腰のラインを何度もなぞる。 「──いいから、黙って」 次々と襲ってくる甘い刺激に、私の目からは嬉しさから涙が一筋流れて。 それに気が付いた課長が、私の目元を優しく指で撫でる。 拭いきれない涙を、課長のざらりとした感触の舌がそっと舐めるように触れて。 それにビクリと身体を震わせると、課長が小さく笑ったような気がした。
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