Sixth

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「金山、良かったね!おめでとう!」 「相田。ありがとう」 仕事終わりに相田と飲みに来た私は、綾人さんに許可を取った上で綾人さんと付き合うことになったことを相田に報告していた。 「でも社内恋愛が禁止だなんて全然知らなくて……」 「え!?知らなかったの!?新入社員研修であんなに忠告されたのに!?」 「……え、そうだったっけ……?」 「そうだよ!もう、金山聞いてなかったわけ!?」 「うん……。それが全く記憶に無くて……」 苦笑いする私に、相田は呆れたように溜息を吐いた。どうやら社内恋愛が禁止だと言うことを知らなかったのは私だけだったようだ。新入社員研修なんていつの話だよ。そう思うけれども。 確かに私も当時しっかり聞いていたら何年経ってもそれだけは覚えていたのだろうなと思う。 つまりただ単に聞いていなかっただけなのだ。 当時の自分が情けない。悔しい限りである。 「で!どっちから告ったの!?」 「え……いや、どっちとかそういうのじゃ……」 「何々、どういうこと!?」 根掘り葉掘り聞いてくる相田に私は逃げることができない。 「今日はぜーんぶ喋ってもらうからねー!」 相田の笑顔がとても怖くて、漏れなくほとんど全部を話す羽目になってしまったのだった。 「へぇー?あの課長がねぇー?」 「……何よ」 「いやあ?何でもない」 「……」 もちろん綾人さんが超甘党だということはトップシークレット。それに関することは話していない。 しかし私の話を聞いてにやにやが止まらないらしい相田は、頬杖をついて私に意地の悪い視線を送ってくる。 ……これはしばらく揶揄われそうだ。 「相田にしか言ってないんだから、誰にも言わないでよ!?」 「はーい!わかってます!」 「本当かなあ……心配だ」 「何さー、信用無いなあ」 「だって何か企んでる目してる」 「はははっ!」 面白そうに笑う相田は、 「ははっ、大丈夫。金山が本気で嫌がるようなことはしないよ」 ごめんごめん、と笑いすぎて涙目になりながら言う。 「金山は、飛成課長と離れるの嫌なんだよね」 「……うん」 「それに営業の仕事も、金山好きだもんね」 「うん」 「私も出来る限り協力するよ。二人が一緒にいられるように」 私に語りかけるようなその声のトーンはいつも通りだったから、きっと大丈夫だろう。 「……ありがとう」 お礼を言うと、嬉しそうに笑った。
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