Sixth

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───── ─── ── 二人が入社したのは実に十三年も前のこと。 恭子さんと綾人さんは、入社式で顔を合わせたものの営業と開発という違う部署に配属。一年経つまでお互いのことは顔と名前くらいしか知らなかったと言う。 そんな二人が急接近したのは入社して一年が経った頃。 開発部に配属された恭子さんは自分の企画が初めて通り、出来た商品を営業の社員にプレゼンすることになった。 「今回の商品のコンセプトはーー」 営業一課に配属されていた綾人さんは、その会議に出席しており恭子さんのプレゼンを聞いていた。 会議が終わってから、少し話す時間があったらしい。 「飛成さんって、営業一課で凄く成績が良いんですって?」 「いや……運が良かったのもあるけど。それよりも坂本さんの方が凄いんじゃないか?二年目で企画が通るなんて」 「ふふ、私も運が良かっただけよ」 最初は、そんな会話から。 それから営業一課によく出入りするようになった恭子さんと同期の綾人さんが仲良くなるのには時間は掛からなかったと言う。 「綾人って呼んでいい?私のことも恭子でいいよ」 「わかった」 仕事ができるもの同士が惹かれるのは当然と言えば当然か。 「ねぇ綾人。私達、付き合わない?」 「……あぁ。いいよ」 そんな、淡白な始まりだった。 「綾人!帰ろう!」 「あぁ、今行く」 二人の交際は、部署が違うため意外にもオープンなものだったそうだ。 美男美女。その言葉がとてもよく似合う二人は社内でも有名カップルで、どっちが告白したとか、すぐ同棲を始めたとかそうじゃないとか、色々な噂も飛び交っていたらしい。 その頃から綾人さんは今と同じ感情が表にはほぼ出ていなかったようだが、元来の顔の良さもあり人気が出ていたそうだ。 恭子さんがいないところでは様々な女性からのアプローチもあったと言う。 なのにそれのどれにも靡かず、恭子さんがいない時には仕事に邁進していたらしい。 硬派なイケメン。しかもこのままいけば出世コース間違いなし。 女性ファンがすごく多かったそうだ。 それを僻んだ男性社員から "女に入れ込んで営業成績が下がるのではないか" というような噂も出ていたようだが、むしろ成績は右肩上がりであっという間にチーフ候補になったそうだ。 恭子さんは恭子さんで、その後もいくつも新商品を開発して、着々と出世コースを走っていた。 そんな矢先に、二人は別れてしまったのだと言う。
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