Sixth

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「申し訳ございませんが、うちの部下を口説くのはやめていただきたいですね」 「ははっ、すみません。金山さんがお綺麗だったのものでつい」 いやいや、"つい"じゃないから。 顔が引きつる私とは対照的に爽やかに笑う堀井さん。 残っていた数人の同僚が目を丸くして私達三人を見つめている。 「それでは、また明日お待ちしております」 課長が無理矢理話を終わらせて帰るように促すと、 「あー……なるほど」 そう微かに聞こえる声量で呟いた。 そして 「はい、また明日お伺いさせていただきますので、よろしくお願いいたします。失礼いたします」 綺麗な会釈と共に爽やかに帰って行った。 堀井さんがフロアを出て行った瞬間に、残っていた同僚達が私の周りを取り囲む。 「チーフ!何でご飯行かなかったんですか!」 「そうですよ!あんなイケメン!勿体無いですよ!」 「えぇ……?」 「あのちょっと強引な感じもまた唆られるじゃないですか……!あぁ!勿体無い!」 「橋本ちゃんまで何言ってんの……」 物凄い勢いに圧倒される。 そんな私には何も言わずに綾人さんは自分のデスクに戻って行った。 ……後で、お礼を言わないと。 でも気まずい! 社内恋愛禁止というのはただ黙っていればいいのだと思っていたのに、まさかこんな弊害を生むとは。正直考えが甘かったようだ。
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