Sixth

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翌日、再び堀井さんは朝から綾人さんとの会議のために営業一課を訪れていた。 「おはようございます」 今日も爽やかな挨拶と共に現れた堀井さんは、綾人さんの案内で会議室へ。 金曜日の今日は仕事の後に綾人さんの家にお邪魔させていただくことになっている。そのままお泊り予定だ。 外出を控えてお家デートがメインだなんて、どこぞの週刊誌に追われる芸能人みたいでちょっと緊張する。 会議が終わる前に私は後輩と共に外回りに出向き、帰ってきた頃には堀井さんはもういなかった。 一日の仕事を終えると既に外は暗く、綾人さんはまだ仕事をしていたようだ。 「お先に失礼します」 声を掛けると一瞬私に目をやる綾人さん。 すぐに逸らされて「……お疲れ」との声を聞き、私は会社を後にした。 そのまままずは自宅へ戻り、お泊まりの用意をしようと駅までの道程を歩いていると、 「金山さん!」 横から話し掛けられてそちらを振り向いた。 「……あ、堀井さん」 そこには堀井さんがいて、私を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。 「どうしてここに?飛成との会議はお昼前には終わったと伺っていますが……」 「はい、会議を終えてホテルで仕事してから金山さんに会いたくてまた来てしまいました」 「……え」 「本当は会議が終わった後にお昼に誘おうと思っていたのですが、外回りに行ってしまったと伺ったので」 「あぁ、そうですね……」 「なのでご迷惑は承知で待たせていただいていました」 「はぁ……」 突っ込みどころが多すぎて逆に言葉に詰まる。 そんな私にチャンスを感じたのか、 「この後お時間ありますか?実は僕、明日の午前の便で東京に帰ってしまうので今日しか時間が無くて。もし少しでもお時間あればお食事でもと思ったんですけど……」 「えぇっと……」 「忙しければ、せめて連絡先の交換だけでもしていただけませんか?……どうしても、このまま別れるのは嫌でして……」 そんなストレートなアプローチを受けた経験があまり無い私はどう断ったらいいのかわからなくて戸惑う。
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