Sixth

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「え、課長?」 「お前もう黙れ」 「え?え!?」 「ははっ!……はぁー……適いそうもないなー……。金山さん、驚かせてしまってすみませんでした。今回は帰ります。 でも今度もしお会いする機会があったら、……容赦しないのでそのおつもりで」 姿はよく見えないけれど、最後の言葉は課長に向けて言ったようだった。 「金山さん、俺のこと、考えてみてくださいね!今度は連絡先交換させてくださいねー!」 「えっ!?」 「それでは、失礼します」 よくわからないまま、堀井さんはそう言って帰って行ったようだ。 そして綾人さんはしばらくそのまま立っていたものの、私の手を引いて会社の裏に向かう。 時刻は既に夜。街灯の無い自社ビルの裏は、真っ暗で。周りから死角になる建物の窪みに連れて行かれた。 「……綾人さん?」 「本当お前……心臓に悪い」 「え?」 私の存在を確かめるようにギュッと抱きしめる綾人さん。 はぁ、と溜め息を吐きながらも離してくれる様子は無い。 「……すみません。私、ああいうの断るのが凄く苦手で……」 綾人さんの背中に腕を回す。 すると私を抱きしめる腕の力が強くなった。 「私、変な顔してました?」 堀井さんに言われたことを思い出して聞いてみる。 すると 「……襲いたくなる顔してた」 と衝撃的なことを言われた。 「そ、そんな顔してませんっ」 「いやしてた」 「なっ……」 一体それはどんな顔なんだと悶々としていると、ゆっくりと離れた身体。 「……綾人さん?」 言うが早いか、私を見下ろす目が近付いたかと思うと優しく重なった唇。 唇を吸い取るようなキスから、段々と深いキスに変わっていって。 外でこんなことをしている背徳感が体の奥底の欲を煽る。 必死で綾人さんのキスについていこうとしているうちに息は上がり、次第に頭はボーッとしていた。 唇が離れた時には腰が抜けかけていて、綾人さんが支えてくれていなかったらそのまま倒れていただろう。
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