Seventh

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***** 「どこに行くんですか?」 「まぁ、ちょっとな」 その含みのある言い方が凄く気になる。 綾人さんの家に泊まって起きた土曜日。二人で寝過ぎてしまって起きた時にはもう昼近かったものの、 "出掛けるぞ。準備して" という綾人さんの声にとりあえず着替えてメイクを施して綾人さんの家を出た。 すると車に乗せられて今、高速を通ってどこかよくわからない道を走っている。 「そろそろ教えてくださいよ」 「そしたら楽しみが無くなるだろう?」 「……」 嬉しそうな綾人さんの顔を見たら、何も言えない。 季節は既に初夏。 窓から見える青空はとても綺麗だ。 「綾人さん、眠くないんですか?」 私より遅く寝て私のちょっと後に起きた綾人さん。 「まぁ、眠くないって言ったら嘘になるが、今日は元々この予定だったからな。大して苦ではない」 「なら良いんですけど……」 「歩は眠かったら寝て良いからな。着いたら起こしてやる」 「……はい」 実は私もまだ眠かった。見抜かれていたのかと少し恥ずかしくなる。 心地良い車の揺れと流れる洋楽が眠気を誘う。 「……おやすみ」 そのまま眠ってしまっていた。 「──ゆむ、歩」 「ん……あれ、かちょー、つきました?」 「あぁ、着いたよ。起きれるか?」 「はい……」 肩を揺すられて目を覚ますと、欠伸をしている綾人さんの顔が。 やっぱり眠いんじゃないか。大丈夫かな。 不安になるものの、綾人さんはやはり嬉しそうだ。 車を降りるとそこは一面のひまわり畑。 「す、すごい……綺麗……」 「確かテレビ見てここに行きたいって、前言ってただろ」 「言ったような気がします……」 そんなちょっとした言葉を覚えていてくれたなんて、思いもしなかった。 嬉しくて、言葉も出ない。 快晴の青空に生き生きとしたひまわりの黄色がよく映える。 風の音が心地良くて、空気も美味しい。
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