Seventh

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「……ハルカ」 「ん?何?」 「来週の日曜日、空いてる?」 「え?うん。空いてるけど」 「俺、ここ行きたいんだけど……」 「どこどこ?」 スマホの画面を見せると、途端に曇るハルカの表情。 「ハルカ?」 やはりびっくりさせてしまっただろうか。不快な思いをさせてしまったのだろうか。そう思って顔を覗き込むと、ハルカはなんとも複雑そうな顔をしていた。 「……え、どういうこと?」 責めるような口調に、どうしてか俺は一歩後ろに下がった。 「どういうこと、って?」 「綾人君って、甘いもの嫌いだよね?」 決めつけるような言葉に、首を横に振る。 「……俺多分今まで何も言ってなかったけど、実は俺甘いもの大好きなんだよね」 甘党なんだ。そう答えると、ハルカは傷付いたような顔で 「何それ!聞いてないんだけど!」 と急に声を荒げた。 「うん。言ってないね」 「は!?何なの!?」 もしかしたら、俺にも非があったのかもしれない。自分の好きな人には、自分の好きなものを知っていて欲しいと思うのが普通なのかもしれない。言わなかった俺が悪かったんだろう。 それでも、勝手に勘違いして決め付けていたハルカもハルカでそれは愚かな考えだったんじゃないかと、俺は思う。 「何それ……何それ!私困るんだけど!」 「……え?」 「何で!?それなら何で付き合う前に言ってくれなかったの!?」 「聞かれたら言ってたよ。特別言うことでもないと思ったから」 「そんな……」 今考えると、"聞かれていないから言わない"は後付けの理由に過ぎないし、"何故付き合う前に言ってくれないのか"も同じことでしかない。 俺たちは、根本的にコミュニケーションが足りていなかったのかもしれない。 もう少しお互いが踏み込んでいれば、すぐにわかったことだ。 「何それ……困るんだけど」 「……え?」 よく聞こえなくて聞き返すと、ハルカはキッと俺を睨みつけた。 それは、それまで一度も見た事の無いハルカの表情だった。
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